研究概要 |
今年度は,精神障害者地域生活支援サービスと利用者の接合面に生じるリスクを一定の科学的手法と枠組みにより評価,情報共有,管理するためのシステムを構築するための基礎研究として,昨年度に引き続き,サービスにおけるリスクの概念と構造について明らかにすることを目標に研究を計画した。併せて,リスクアナリシス・システムの構成要素について検討することを研究計画に盛り込んだ。その上で,以下のとおり研究を実施し,成果を得た。 1.昨年度実施したグループインタビューにおいて得られた質的データのうち,専門職員より収集したものについて,グラウンデット・セオリー・アプローチ法を用いて,再度,分析を試みた。その結果,地域生活支援サービスにおけるリスクは,サービスを取り巻く環境との相互関係により構成される性質をもつことおよび,サービスに利害関係をもつ対象ごとに構成される秩序維持システム間の交互関係が,専門職員によるリスク対応に影響することを仮説的に捉えた。なお,この研究成果については,2005年6月の第4回日本精神保健福祉学会において発表した。 2.昨年度に引き続き,システムモデル試案の導入を依頼している精神障害者グループホームにおいて,サービスにおけるリスク構造の把握を目的とした参与観察およびフィールド・ノートの作成を月4回の頻度で実施した。 以上の研究実績を踏まえ,質的研究により得られた仮説の実証とリスクアナリシス・システムの構成要素の抽出を目的としたアンケート調査を神奈川県内の精神障害者社会復帰施設等において実施し,データの集積を図っている段階である。
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