本研究は、生活モデル理論に基づくプログラムを実施している高次脳機能障害者の小規模作業所での実践を評価することで、生活モデル理論によるプログラムの有効性を実証し、高次脳機能障害者にとってより効果的な生活支援プログラムを開発することが目的である。 平成16年度は、3ヶ所の作業所に新規登録した高次脳機能障害者の実態把握を中心に調査を実施した。3ヶ所の小規模作業所では回復段階を3段階に分け、障害の程度に応じたプログラムを提供していた。第1段階では、退院後まもなく通所を開始するケースが最も多い。退院直後は、高次脳機能障害を呈する状態が顕著に現れることが多く、また家族も突然高次脳機能障害を抱えた息子等に対して、「どう対応していいのかわからない」「なぜあのような行動をするのか理解できない」など戸惑いを感じていることが多いことが明らかとなった。従来の医学モデルを中心にしたリハビリテーションプログラムでは、身体的な回復に焦点が当てられることから、家族や本人のメンタルケアは置き去りにされてきたことが家族の話しなどからうかがえた。今後は退院直後から通所を開始した者と退院後かなり時間が経過者との比較を行っていく予定である。 生活モデルによる高次脳機能障害者への生活支援は、高次脳機能障害者のできる部分(健康な部分)に焦点をあてかかわるため、「暴れる」「暴言を吐く」「キレル」といった行為の減少が見られていることがわかった。本人が記載している記録物からの変化では、特に最終段階の小規模作業所に通所する者では、自分自身の障害に対する理解が深まっているような言動の記載回数が増えたり、相手に感謝したり思いやる言動がすべての通所者が記載するといった変化が確認された。 来年度は、更に実態把握に努め、生活モデル理論に基づく高次脳機能障害者の生活支援プログラムの有効性を明らかにしていきたい。
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