放課後児童健全育成事業(学童保育)の「現場」は、実に多様である。例えば、異年齢の「班」やグループを構成して係活動に取り組み生活集団とする実践現場もあれば、そうしたグループワークには全く取組んでいない実践現場もある。「遊び」を豊かにするため、コマやけん玉、その他による伝承遊びに取組み、職員による指導や援助が行われている実践現場もあれば、職員による指導や援助が行われない「放任」現場もある。その他、行事の有無、保育計画の有無、ケース検討会の有無等、実に多様である。 研究の初年度である2004年度は、こうした多様性を規定する条件や要因は何かを探るため、入所児童が50人以上の事業1ヶ所と30人までの事業1ヶ所、10数名程度の事業1ヶ所について、放課後児童健全育成事業の参与観察を行った。いずれも経営は、実質的に父母らによって経営されている事業である。 2004年度以前に行ってきた現地調査の蓄積とも併せて導きだされた作業仮説は、次のようなものである。冒頭のパラグラフに述べたような実践のありようについて、これを規定するのは、施設や入所児童数などの条件整備面の要因よりも、職員が所属する専門職集団の有無や同僚性のありかたの方がより強いのではないか。さらに実践の質についても、職員の在職年数以上に所属している専門職集団・同僚性のありようが大きな規定条件となっているのではないか、というものである。 今後は、これらの条件に加え、入所児童数・施設の面積や形態・職員の数や任用のあり方・職員の身分や労働条件などの条件整備の違い、施設の経営・運営形態(法人経営、公立、父母会経営等)の違いが、実践のありようにどのように影響しているかについて検討し、仮説を練り上げていくことが課題となる。 なお、本研究の参与観察においてはビデオカメラによる記録を大きく導入している。記録化された映像を編集し、職員(専門職集団)との面談調査に活用することも課題である。
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