放課後児童健全育成事業(学童保育)の実践内容や方法は、法令による最低基準が示されないでいるために、多様であるばかりか、グループワークに全く取組んでいないばかりか職員による指導や援助が自覚的には行われない「現場」、実践の計画や省察が行われない「現場」もあり、職員の専門性や倫理がと割れざるを得ない場合が多い。このような実態を整理していく視点として本研究は、仮説的に、グループワーク(集団づくり)の方法論・実践の計画性・実践の省察のあり方に着目し「現場」の観察を行ってきた。 この着眼点(視点)から見たとき、実践のありようを規定しているのは、第1には、保育条件である。典型的には事業の実施場所・建物の広さや間取り、学童保育指導員の配置が、事業を利用する子どもの人数に則して考えられているかどうか。例えば100名を超える利用希望児童数に対して、一事業で対応している事業所では、職員の仕事は子どもと直接関わることが少なく危険がないよう見ているだけになっていた。他方、同じ学校敷地内の離れた場所に保育室等を設置し分割し、一事業における人数を50人程度にした「現場」では、子どもたちのグループづくりと一人一人の育ちを職員集団で確認しあうことが可能となっていた。また、直接的な保育活動時以外の時間が労働時間と見なされているかどうかは、実践の計画性・実践の省察をする基本的条件である。 第2の条件は、職員集団によって生み出される実践文化や職員アイデンティティである。例えば、異年齢集団のなかでより小さな子は大きな子への憧れを持ち、より大きな子はリーダーとしての経験を自分の成長につなげている「現場」をつくりだしている職員は、地域や「現場」で自らの実践を検証しあう職員集団を構成していた。実践方法論としてグループを構成し生活集団とする方法が採用され、それは職員集団のなかで継承発展させられていた。また、こうした職員集団の実践文化は、保育条件への強い関心と要求をもたらし、自らを専門職もしくは専門職になりゆく存在としてアイデンティファイさせていた。
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