本研究では、コミュニティワーク実践を抽出・整理・分析するとともに、それらを社会福祉士養成教育にいかに反映していくかを研究しており、とりわけ「演習」や「現場実習」における教材・方法を構築したいと考えている。本年度の研究では、ソーシャルワークの発祥および教育の先駆であるアメリカおよびイギリスにおけるコミュニティワーク実践(※1)および実習教育方法の視察聴取調査を行った。 アメリカ合衆国のテネシー大学(テネシー州メンフィス市)およびその実習機関(家族支援センター、精神障害者支援センター、市教育事務所など)、また、ワシントン大学(ミズーリ州セントルイス市)およびその実習機関(家庭子育て支援センター、コミュニティセンター)を訪問し、教員、学生(実習生)、実習指導者(=ソーシャルワーカー)等にインタビューを行った。イギリスでは、サウザンプトン大学(サウザンプトン市)およびその実習機関(市保健福祉事務所)を訪問し、教員、学生(実習生)、実習指導者(=ソーシャルワーカー)等にインタビューを行った。 両国ともにソーシャルワーク実践および教育がエビデンスに基づいた科学的なものであり、現場実習の質量の充実やシステムは大いに参考となるものであった。またとりわけアメリカでは、ソーシャルワーク実践がインフォーマル資源の開発、コミュニティ再開発、制度の改変まで視野に入れたダイナミックなものであることを実感した。我が国においても生活課題は多様化しつつあり、今後ますます制度外の援助が必要となってくると考えられ、地域を基盤としたソーシャルワークの重要性は増すものと考えられる。 ※iちなみに、今日欧米では、コミュニティワークは実践上も教育上もジェネリック・ソーシャルワークないしはコミュニティ・ソーシャルワークのパーツとしての位置づけとなっているため、訪問実習機関もコミュニティワークに特化したものではないことを断っておく。
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