本研究の目的は、以下である。 (A)社会福祉における論理的基盤の一つとされるフーコーの議論の妥当性を明らかにする。 (B)Aを含む新しい理論を生む要因について、いくつかの事例を通じて検証する。 (C)一つの社会福祉理論を生み出す歴史的・社会的背景を明らかにする。 また、本年度は以下のような計画を実施する予定であった。 1)社会福祉サービスのあり方の変化と社会福祉理論の変遷との関連について、検証の主な舞台であったイギリスにおいてインタビュー調査などをおこなう。 2)来年度の報告に向けて、SPA(イギリス社会政策学会)に参加する。 3)福祉領域の「ポストモダン」に造詣の深い、N.Parton教授のもとで短期的な研究をおこなう。 6月に、(C)一つの社会福祉理論を生み出す歴史的・社会的背景を明らかにすることを目的とした単著を出版した。また、年度末には、(A)社会福祉における論理的基盤の一つとされるフーコーの議論の妥当性を明らかにすることを目的の一つにした著書をまとめた。後者については、現在、出版社と調整中で、2006年度の半ばには出版する予定である。 これらの業績は、2005年7月6日から7月13日におこなった、エジンバラでの公的施設の見学と資料収集、NGO団体「クレマンツ・ユニオン」NGO関係者への聞き取り調査や、2005年2月24日から3月13日にかけておこなった、ケンブリッジ・ハルでの福祉関連施設の見学、研修への参加および資料収集から得た知見をもとにまとめたものである。よって、(1)は実現できた。 しかしながら、資格関連の講義を15コマ確保しなくてはいけなくなったことなどから、(2)は実現できなかった。とはいえ、夏季休暇機関を利用し、ビル・ジョーダン氏のもとで短期的な研究(3)をおこなうことができた。
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