本年度は、歴史的に賃金問題との関わりのなかで創設されたフランス家族手当にたいする労使それぞれの今日的見解を検討することに力点を置いて研究を進めた。具体的には、(1)CGT(労働総同盟)を中心とする労働組合、(2)MEDEF(フランス経団連)に代表される経営者団体、双方の家族手当政策に着眼しその今日的動向を分析するべく、現地調査・研究交流を実施した(平成17年9月13日〜9月23日)。 一連の調査は、1998年から1年足らずの間家族手当に導入されていた所得制限を軸に進められた。CNAF(家族手当全国金庫)における調査では、労資双方のみならずアソシアシヨンの動向も視野に入れて分析することの重要性に気づかされた。また、社会保障に関する目的税的性格の強いCSGが1992年に導入されて以降、代表的な経営者団体(当時のCNPF、今日のMBDEF)の家族手当政策が変化を見せてきているとの示唆を得た。家族問題に関するフランス最大のアソシアシヨンUNAF(家族団体全国連盟)では、家族手当導入時のJospin内閣をはじめとする歴代内閣の家族手当政策に関する情報を得た。とりわけ、1970年代以降、右派・左派いずれの政権も家族手当への所得制限導入について前向きの姿勢を示してきた、との指摘は重要と言えよう。さらにUNAFの調査では、1998年6月に家族手当の所得制限撤廃が決定されるまでの過程について、貴重な資料を得ることができた。現地で得た資料・情報については、これまでの研究成果を踏まえつつ考察を加え、論文としてまとめているところである。 3年計画の最後にあたる来年度は、シラク政権下の家族手当改革と労働組合・家族団体の運動を中心に検討を加え、総括を試みる。
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