研究計画の最終段階にあたる本年度は、1.シラク政権の下で推進されたフランス家族手当制度改革を取り上げ、2.同改革にたいする労働組合・家族団体の運動について検討・分析することを課題とした。 1.第1次シラク政権下の家族手当制度の展開において最も重要な1997年改革に着目し、ジョスパン左派内閣が打ち出した政府案について政策分析を行った。また、国民議会における審議状況を通じて、家族手当への所得制限導入策にたいする各政党(社会党・共産堂・RPR・UDF)の姿勢を分析した。 2.代表的なフランス労働組合の1つであるCGT(労働総同盟)とフランス家族運動の主要組織であるUNAF(家族団体全国連合)が、1997年改革論議において明らかにした運動方針を検討した。両者は家族手当の受給権を「すべての子供に開かれた普遍的権利」と位置づけており、この分野への所得制限導入を徹底して批判する姿勢が確認できた。なお現地調査(平成18年8月27日〜9月4日)の際にUNAFの研究員から、当時の運動の実態に関する情報を得ることができ、とりわけ1998年3月に実際に家族手当分野に導入されることとなった所得制限がわずか10か月で撤廃されるに至った社会的背景に関する情報が得られたのは、大きな収穫であった。 これまでに進めてきた研究の成果については、論文としてとりまとめ、『中央大学経済研究所年報』にて公表する予定である。
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