環境問題の解決策に関する事例調査及び実験研究から、社会的ジレンマ状況における合意形成プロセスの研究を行った。合意形成の中でも、解決策としての制度導入支持へ関連する要因としてのフリーライダー問題と手続き的公正の観点から検討した。本研究では、環境問題のジレンマ解決への合意形成の阻害・促進要因としてのフリーライダーと公正の知見について、ゲーム実験及び事例調査から検討した。 (1)ゲーミング・ゲーム実験 新たなゲーミングを開発した。産業廃棄物の不法投棄問題を扱い、従来の単純な社会的ジレンマ構造に、利得の非対称性、情報の非対称性、フローの一方向性などを加味し、プレーヤー間のインタラクションがある現実味をもったゲーミングを作成した。監視を強化しても協力行動につながらない状況があることをデモンストレーションした。これらの成果は、シミュレーション&ゲーミング学会春大会にて実演し、秋の大会で詳細な報告をした。 また、インターネットを使った仮想実験で、環境配慮行動の持続性と行動と態度の変化を調べ、態度が行動を規定するというより、行動することにより社会規範が形成されることを示した。 (2)事例調査 環境問題に関する社会的ジレンマ及び公正感に関する社会調査を2つ実施した。一つは、いわゆるポイ捨て禁止条例の受容に係る調査である。千代田区における事例調査の結果、手続き的公正感が高いほど施策を受容しやすいという結果が得られた。この結果は26th International Congress of Applied Psychologyにて報告した。もう一つは、自転車の路上違法駐輪に関する調査で、社会的ジレンマ事態における行動選択の一つと捉えたときに、現実には、監視や罰則の強化はあまり有効でなく、外界の誘因を考慮した強化子を発見していく方法が有効である可能性を示唆した。この結果は、日本心理学会第70回大会で報告した。 なお、以上の成果の一部は、査読論文として学術誌に投稿しており、現在審査中である。 さらに、ゲーミング実験や社会調査などの結果を集大成として社会的ジレンマという切り口から一冊の著書「人はどのような環境問題解決を望むのか-社会的ジレンマからのアプローチ」として取りまとめ2007年2月に刊行した。
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