研究概要 |
政治的寛容性とは「自分とは反対の、受け容れがたい意見に"耐える(put up with)"こと」(Sullivan et al.,1982;Weissberg,1998)と定義され、近年、他文化主義との関連で取り上げられることが多い概念である。対人的環境が政治的寛容性に及ぼす影響については、「異なる意見に接すると、政治的寛容にプラスに作用する」(Mutz,2002)ことが指摘されているが、その実証研究例はあまり多くない。 本研究は、対人的ネットワーク内の意見や価値観の等質性/多様性の認知が、政治的寛容性および情報接触に及ぼす影響について検証することを目的としている。 研究計画の2年目にあたる本年は、東京都多摩地区において実施したスノーボーリング調査について、データ入力と分析を行った。 まだデータの分析途中であるが、現在までのところ、得られた知見は以下の通りである。(1)郵政民営化に関する周囲の意見分布認知は、主回答者の攻治的寛容性に有意な影響をもっていなかった。(2)政治的寛容性に対しては、性別(女性のほうが寛容)、世帯年収(高いほど寛容)、イデオロギー(革新的なほど寛容)が優位な効果を持っていた。(3)メディア接触については、テレビ視聴時間が長くなるほど、政治的寛容性が低くなる傾向にあった。なお、政治的寛容性については、「異なる価値観の人を受け入れるべきだと思うか」「民主主義に反対する団体にも公民館の利用を許可すべきか」「定住外国人への参政権を認めるべきか」「同性同士の結婚を認めるべきか」という項目を用いて測定している。 本年はこれらの知見を踏まえ、調査結果報告と第二次調査とを兼ねて、第1回調査の回答者に対し、第2回目の追跡調査(パネル調査)を行った。その結果については、2006年7月に福岡で開催される国際政治学会(IPSA)で報告する予定である。
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