研究概要 |
本年度は予備調査として,高知県の老人施設において1回,東京都の老人施設において8回程度の観察調査を行った.更に集団活動を対象として興味深い実践を展開している,北海道の老人施設において2回の観察調査を行った. 予備調査では各施設で痴呆症高齢者を対象に日常的に行われている集団活動を観察しながら,デジタルビデオ機器を用いて入居者と介護者の相互作用場面を撮影した.また必要に応じて入居者および介護者へのインタビュー調査を行い,入居者の集団活動に対する感想や,介護者の役割意識や介護方針といった個人の認知に関する報告を記録した. それぞれの映像・音声記録は,学生アルバイトの協力を得ながら,コンピュータを用いてデジタルメディア(DVD-RAM, CD-R)に保存された.次にメディア上の記録から,目録とトランスクリプト(文字化)の作成を行い,分析のための資料を準備した. 整理されたデータに基づいて質的な検討を行い,本調査に適切と考えられる調査対象場面(料理クラブ活動,音楽クラブ活動,演劇活動場面など)と,主に介護者を中心として対象者の選定を行った.選定した対象場面を基に,各施設で来年度の継続調査を依頼している. 観察調査と平行して研究に関する文献調査を行い,本研究との関連が深いと考えられる,社会文化的アプローチによる相互交渉研究に関する近年の成果(Rogoff,2005;Wertsch,1998)や,質的老年研究でのフィールドワーク研究(Corbin,2002)の手法を検討した.これらの手法を参考に今後の分析を進める予定である.
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