研究概要 |
本年度は、主に2つの観点からの検討を行った。一つは調査手法を用いた実際の社会における対人関係の中での選択様相の検討である。特に現職の保育士およびホームヘルパー従事者にソーシャルサポート希求時の他者選択の様相を場面想定法および回想法の調査を実施し検討した。現職保育士対象の調査は、233名から回答が得られた。ホームヘルパー従事者対象の調査では、117名から回答が得られ、分析を行った。その結果、ストレスレベルが高い場合、職場関連の問題解決を職場外の人物に求めやすく、そのことが不適応を助長することを示唆する結果が得られた。この結果は、低自尊心者が不適切な他者選択を行いやすいという本研究の命題を側面的に支持するものであると言える。なおこの結果の一部は、2005年9月に開催予定の日本心理学会で報告予定である。 二つ目は、ゲーム手法を用いた対人選択の様相の検討に対する予備的検討である。本研究では、説得・納得ゲーム(杉浦,2003)の手法を援用して、ゲーム状況における相互作用場面の観察のための予備実験および資料収集を本年度行った。特に、どのようなテーマや集団において、このようなゲーム手法が適用可能であるのかについて調べ、またゲーム初期における対人選択の様相の観察を行った。学生28名を対象に異性意識をテーマに、小学校のPTA12名を対象に地域防犯をテーマにゲームを行った。そのうち学生を対象に行ったゲームの結果から、自尊心の差異がゲーム前後の意識変化に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、学生に対しては、ゲーム手法を利用した他者選択の様相の検討が十分可能であることの示唆がなされた。なおこの結果の一部は、2005年3月に開催された日本グループ・ダイナミックス学会で報告した。
|