研究概要 |
大学生が獲得する必要のあるリテラシーとして,拡散的思考型ライティングを取り上げた。平成16年度は関連する国内外の諸研究の調査と,本研究で実施する予定の実験の準備を完成させた。 国内外の関連研究の調査としては,文献検索による調査を広く行うと同時に,国内外の学会に参加して情報収集を行った。国内では日本教育心理学会に参加し,他のリテラシー研究者との情報交換を行った。また,平成17年度の日本教育心理学会において,高水準リテラシーの発達と教育というタイトルでシンポジウムを企画することになった(このシンポジウム企画は,平成16年3月に日本教育心理学会の審査を経て採択された)。海外についてはヨーロッパとアメリカの大学教育関連の学会に参加した。昨今の大学改革をめぐる世界的な流れの中で,リテラシー評価の方法が大学評価の一指標として重要な位置を占めつつあることなどがわかり,収穫が大きかった。 なお,これらの国内外の諸研究をレビューした成果は,2005年3月発行の書籍において公刊した(研究発表の欄を参照)。 ライティング能力の測定は実のところ大変に難しく,上記の欧米の学会で発表されているものも,通常の大学の授業でのエッセイの採点の枠をでるものではない。だがそれでは,研究尺度として心もとない上に,利用しやすさにも劣る。本研究では,被験者に文章を書かせるのではなく,他者の文章を評価させるという方法で,ライティング能力を測定することとした。具体的には,著者の主張とその根拠の両方がある文章,主張のみで根拠のない文章,主張も根拠もない文章などを用意し,レポートライティングにおいては,拡散的思考によって自ら課題を設定して主張を展開する必要があること,その主張は根拠によって支えられなければならないことを,大学生が理解しているかを調査することにした。予備調査を行い,実験材料としての妥当性を確認済みである。
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