研究概要 |
大学1年生に対して,仮想レポート評価法を用いて議論型ライティングスキルの測定実験を行った。議論型ライティングとは,文章で書く主張(問題設定)とその根拠(理由の探求)を伴うライティングスキルのことである。 仮想レポート評価法とは,主張のない文章,主張はあっても根拠のない文章といったいくつかの仮想レポートを被験者に評価させることによって,その被験者のライティングスキルを測定するというものである。 この方法を使うと比較的短時間で大学生のライティングスキルを測定できるというメリットがある。ただし,ライティングスキルの判定に至らない被験者が多く出てしまうというデメリットがあることも判明したので,この点については今後改良が必要である。 仮想レポート評価法で測定が行えた被験者の結果を見ると,大学1年生では文章に主張が必要であることを理解している者の割合は半数以上あるが,主張に根拠や理由が必要であることを理解している者の割合は4分の1程度であることが明らかになった。また,レポートの書き方を習ったことがあるかどうか,レポートを添削してもらったことがあるかどうかは,被験者の論型ライティングスキルの水準に影響を与えていなかった。 主張と根拠が揃っていて初めて「論じる」ことができるのであるが,大学1年生の結果を見ると,彼らのライティング能力が中等教育以前の「作文」の域から脱却していないことがうかがえる。今後は主張と根拠の関係の理解がどのように発達するのか,より適切な根拠を選択できるようになるまでの発達変化等を明らかにしていく必要がある。
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