本年度においては、観察対象とした保育園に通園する発達障害児に対して、その行動特性を予備的に調査した。あわせて、逸脱行動の把握のために、健常児がいかなる状況で逸脱行動を示すのか、また、保育士がそれらに対していかなる介入行動を示すのかを検討した。その結果、5歳齢児に対しては、保育士は設定された場面においては児の行動を方向付ける介入行動を頻繁に示す一方で、児が自由に遊んでいる場面においてはそのような傾向はみられず、児自身に判断を求める介入行動が多いこと認められた。また、保育士は児に危険が及ぶような場合以外には介入を補助的に用いており、児が自身の行動に注意を向ける機会が与えられていることが示唆された。保育士による介入が児に与える影響を検討したところ、介入の継続時間が長くなると、その後、児が介入の対象となった行動を再出現させることは少なくなった。しかし、児が行動を再出現させた場合のみに注目すると、介入の継続時間の長さが児の行動に与える影響は認められなかった。これらから、保育士による介入時間の長短だけでなく、介入を受ける側である児による、介入を受けた理由の理解といった要因も介入の効果に影響を与えていると考えられた。また、「禁止」や「説明」といった行動が含まれる介入により、逸脱行動の再出現率が低下した。しかし、これらの介入行動は保育士によって頻繁に用いられるものではなく、保育士の介入は児の行動を必ずしも即座に変化させようとするものではなかった。このことからも、児は望ましい行動を考えたり、自ら気づくという過程を辿るように介入を受けていることが示唆された。
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