本年度においては、昨年度に引き続き、保育園児の逸脱行動とそれに対する保育士の介入行動についてより詳細に検討した。保育士が介入を行った逸脱行動を示した幼児には、性差は認められなかった。すなわち、保育士は男児、女児いずれに対しても、保育士は同程度その逸脱行動に介入していたことが明らかとなった。先行研究により逸脱行動の生起には性差が認められ、男児はより多くの逸脱行動を生起することが示されているが、本研究においては、保育士の介入という視点からはそのような性差は認められなかった。先行研究と本研究の差異には、逸脱行動の生起数に男児、女児による差が認められない可能性と、女児は男児よりも逸脱行動を示すことが少ないものの、保育士がよりそれに介入することが頻繁である可能性があることが挙げられる。児がいかなる逸脱行動を示し、それに対し、保育士が介入するのか否かを検討する必要がある。また、保育士は、効果の高いより直接的な介入行動は頻繁には用いておらず、効果は低いものの幼児の判断に委ねるような介入を、幼児の逸脱行動に対して用いていた。この経験を通じて、幼児は自己制御能力を高めていくものと思われる。 上記の研究とあわせて、保育園において、保育士の特別な配慮が必要と思われる幼児の調査を実施した。4歳齢から6歳齢までにおいて、各年齢において、特別な配慮が必要な幼児が1〜3名程度存在していた。その内容は、「集団場面において逸脱しやすい」、「食事時の偏食が強い」、「他児に対して攻撃的である」等が挙げられ、多くの場合は社会性に関して課題が存在することが認められた。
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