研究概要 |
発達障害のある人を対象とした支援施策に関する課題として,それぞれのライフステージでの課題に対応した支援内容を整備することと,ライフサイクルを通して一貫した支援を実現するための連携体制を確保することが挙げられる.本年度は,ライフステージによって異なるニーズに対応し,ライフサイクルの転換期でのスムーズな移行を支援するための基礎的資料を収集することを目的に障害特性や支援に関わるアンケートを実施した.調査対象について,A県内の軽度発達障害児の保護者を対象とした. 調査の結果,明らかになったことを,下記に列挙する.(1)発達障害児・者の現在の社会生活状況に関して,全てのライフステージで順位が高いものは,金銭管理や掃除・かたづけ,大切な物の管理,などであった.(2)年齢が上がるほど順位が高くなるのは,食事摂取,生活リズム,衛生・みだしなみ,などであった.適応スキルについて,全てのライフステージで順位が高いのは,「社会的スキル」と「家庭生活」,年齢が上がるほど順位が高くなるのは,「仕事」と「健康と安全」の領域だった.(3)学校と相談支援機関を対象とした調査もあわせて実施し,各々の機関が,発達障害の児童・生徒への介入・支援について,連携して対応することを効果的だと考えているが,具体的な連携形態に関しては効果に関する評価がわかれ,適切な機関連携を促進するための仕組みづくりが求められることがわかった.これらの結果は,ライフサイクルに応じて,同じ障害特性の方でも,ニーズが変化していき,加えて各機関が連携しての対応を模索しているが,まだその制度的な仕組み自体が十分検討されていないという課題が指摘できる.
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