研究概要 |
本研究では,軽度発達障害児者の親の会(以下,親の会)会員を対象とした調査の結果を統計的に分析し,軽度発達障害児者の生活支援ニーズについて検討することを目的とした. 方法 調査対象者は,A県内の軽度の障害のある子を養育する親の会に入会している保護者であった.111人に調査票を配布して,59人から回答があり,53%の回収率であった.調査方法として,郵送法を用いた.調査の実施時期は,平成15年12月であった.親の会会員のプライバシーに配慮するため,調査票を親の会事務局に一括送付して,親の会事務局から各会員に郵送し,返信先も親の会事務局とした.調査の内容は,(1)基礎的情報を得るための項目(子の年齢,療育手帳の有無など),(2)障害特性に関する項目(10項目),(3)社会生活状況に関する項目(24項目)等であった. 結果 1.障害特性・社会生活状況の因子分析 障害特性に関して,主要な特性を把握するために,学習障害や注意欠陥/多動性障害,高機能自閉症などに該当する10の項目を主成分分析し,第1主成分として「AD/HD傾向」因子,第2主成分として「自閉傾向」因子,第3主成分「学習困難」因子を抽出した.障害特性と同様に,社会生活状況を示す計24項目について,主成分分析を行ったところ,「社会性」・「生活管理」・「身辺処理」・「行動問題」という4つの成分を抽出することができた. 2.障害特性要因と年齢要因にもとづく重回帰分析 障害特性要因や年齢要因が軽度発達障害児者の社会生活状況に与える影響を検討するために,前述の主成分分析で得られた障害特性の各因子得点と年齢を予測変数とし社会生活状況を示す4因子を基準変数とする重回帰分析を行った.分析の結果,「行動問題」には年齢要因の影響が認められず,障害特性要因のみ寄与していたが,「社会性」や「生活管理」には自閉傾向という特性要因とは別に年齢要因の影響が有意に認められた.このことから,生活支援ニーズには特性のみを重点的に考慮していくものや年齢要因も加えて検討する必要があるものなど,ニーズ充足において,配慮を要する留意点に差異があることが示唆された.
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