研究概要 |
注意欠陥・多動性障害(AD/HD)児の主訴の原因となる注意機能や運動抑制能力の中枢発達状態の評価を確立するために,前頭葉機能の背景となる一過性注意過程とその基盤となる持続的注意過程の関連性、さらには両者を総合した注意状態における運動抑制過程の中枢発達の変化及びAD/HD児における障害特性の解明を行うことを目的とする。 初年度は、基礎データの集積として、本研究で用いる課題は連続遂行課題(以下CPT)の妥当性の検討、健常成人を対象に課題遂行時間中の覚醒度の変動を近赤外光脳血流反応によって捉えること、試行における運動抑制のミリ秒単位の過程を事象関連脳電位によって検討した。 CPTは継時的に提示される刺激の中に、応答反応を行う刺激と反応を中止しなくてはならない刺激とがランダムに提示されものであり、持続的な注意と運動抑制能力を同時に測定することができる。また、施行時間は約15分と短時間であり、AD/HD児を対象とする場合には適当な課題遂行時間であるといえる。 持続的注意の変動と脳血流反応については健常成人を対象としてデータ集積を行った。CPT課題遂行中においては、初期には脳血流反応は増加しており課題への注意の高さを反映した反応であると思われる。中盤にいたっては脳血流反応が減少したが、遂行成績の低下は認められなかった。課題遂行に心的努力が必要でなくなった状態においては前頭部の脳血流反応が減少することが示された。一方、事象関連電位においては、運動抑制事態において前頭部から反応抑制性の電位成分の惹起が認められ、その生起タイミングは反応速度との関連性があることが明らかになった。以上の生理指標の結果は、本研究で採用した課題と指標とが中枢の持続的な注意と一過性注意課程とを反映するものであることを示唆している。
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