【研究目的】 本研究では、文化的背景によって異なる自己統制の特徴をみいだし、日米の自己統制の規定要因について検討することを目的とする。子どもに対して新奇な2種類以上の情報が同時に提示された場合に、一方の情報を探索した後、もう一方の情報を探索し、先に見た情報を修正し、新たな情報を付け加えながら複数の情報を統合していく経過について質的に検討し、日米の児童の自己統制について行動分析を行った。 【方法】 1.研究目的を達成するための方法:米国と日本の同数の児童を対象に面接と調査の協力体制で記録を行った。事前に訓練された面接者1名と補助者(記録係)を前半と後半に分けて実施し、全体で480分間のビデオ記録を分析した。 2.研究を遂行する上での具体的な工夫 (1)被験者は児童を対象とし、独自に作成した3種類の動物型の課題(双方的反応課題)を行う。 (2)自己統制尺度(検証尺度を含む)、デジタルビデオカメラ2台とワイヤレスリモコン (3)分析の視点子どもの反応に対応した動きをする課題を用い、2種類以上の情報が提示された場合、複数の情報を知識構造の中に統合していく過程を検討し、自己統制との関係を検討した。 【結果】 子ども同士が課題を行う場面をタイムコード化して記録し、類似した場面ごとに検索し、行動分析を行った。その結果、以下のことが明らかにされた。 1.子どもにとって新奇な2種類以上の情報が同時に提示された場合に、一方の情報を探索した後、もう一方の情報を探索し、先に見た情報を修正し、新たな情報を付け加えながら複数の情報を知識構造の中に統合していく過程をみいだした。その過程で、次の行動を実行するために他者の表情を参照することは、日本の児童に特徴的であった。 2.米国の児童の課題遂行では、分解したり、組み立てたりする探索行動が顕著であり、自己の考え方を周囲に示し、状況を変化させる方向に働きかける特徴が示唆された。 【考察】 日本の児童の行動分析では、他者の表情を参照して自己評価することが顕著であることに対し、米国では、他者の表情を参照した自己評価よりも自己決定に基づく行為が顕著であった。米国の児童の自己効力と興味の持続は、課題遂行中と遂行後のいずれも低下せず、周囲の評価や状況に左右されない自己の特徴がみいだされた。今後は、日米の児童の自己統制の特徴を縦断的に検討することによって、これまでの西洋的な観点に偏った自己統制の理論を修正・発展させていくことを試みる。
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