青年が過去に親から心理的に、また精神的に傷つけられてきたことについて焦点を当て、自由記述によりデータを収集した。そして、そのデータを元にして作成した85項目からなる質問紙のデータ(調査対象者は大学生)を因子分析法により構造分析をおこなった。その結果、青年が親から心理的・精神的に傷つけられることについての概念が5つに集約される結果となった。それらは、(1)親からの干渉因子、(2)自己中心的な親因子、(3)愛情の欠如、(4)親からの暴力因子、(5)進路についての理解の無さ因子の5つの因子が得られた。またこれらの5因子に高く負荷を示す項目を各4項目ずつ選択し、これらの項目を用いて、因子ごとの得点を算出し、父母別男女別の二要因の分散分析を行ったところ、親からの干渉尺度、自己中心的な親尺度、愛情の欠如尺度において有意な差が認められた(尚、尺度の信頼性係数を求めたところα=.776〜.876と比較的高い値であった)。つまり、父親よりも母親の方が干渉的で、母親よりも父親の方が、自己中心的で、愛情が欠如していると、子どもは認知しているということが考察された。また尺度得点の平均値を検討したところ、3を超える尺度得点はなく、全体的にみれば、親から心理的・精神的に傷つけられている程度は低いということが考察された。 次に2004年度に調査を行った、親子関係とアイデンティティに関するデータの整理を行った。小高(1998)は心理的離乳の過程を捉える枠組みを提案しているが、これについての検証を試みた(調査対象者は中学1年生〜大学4年生)。親への態度・行動についての5尺度(1 親からのポジティブな影響 2 親との対立 3 親への服従 4 親との情愛的絆 5 一人の人間として親を認知する)について主成分分析を行ったところ、2主成分(1 親への親和志向と2 親への依存)が得られた。そして、この二つの主成分得点を学年別に算出し、心理的離乳の過程を検討した。
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