研究概要 |
研究課題「抑うつにおける記憶バイアスに関する認知臨床心理学的研究」に関し,今年度は,抑うつの連続性に関する探索的研究を中心に,具体的には次の4つの研究活動を行った. 第一の研究活動としては,本研究課題の基盤となる,これまで積み重ねてきた抑うつと記憶に関する研究成果の学会発表(日本心理学会第68回大会)である.これにより抑うつと記憶に関する意見や助言,資料等を得た.またこれを元に,具体的な調査及び実験のデザインを考案した. 第二の研究活動として,抑うつの構造及び連続性を明らかにすることを目的とし,これまでに収集してあった大学生280名のデータの分析を行った.具体的にはBDIの因子分析,BDIと多面的感情状態尺度との関連性に関する分析を行った.さらに抑うつの程度を4つに区分し,それぞれ比較することを通して違いを明らかにした.現在SPSSを用いて分析をより深く進め,論文を執筆しているところである.来年度,日本感情心理学会「感情心理学研究」に投稿予定である. 第三には,収集した資料をもとに,抑うつと記憶との間の媒介変数としてメタ感情を仮定し,抑うつとメタ感情との関連を明らかにすることを目的として,大学生115名を対象にBDIとメタ感情に関する質問紙調査を実施した.現在このデータを分析し,論文を執筆しているところである.来年度,東北心理学会にて発表予定である. 第四には,抑うつにおける記憶バイアスに関する実験デザインの立案と実験準備である.第一から第三の研究活動の成果に基づき,メタ感情を媒介変数として,抑うつにおける顕在記憶バイアス及び潜在記憶バイアスの検討を目的とし,現在実験における刺激呈示装置の準備と刺激語の選定を行っている.4月には実験に入る予定である. これらを踏まえ,来年度は論文の執筆を中心に,実験の実施及び抑うつへの介入プログラムの立案を行っていく予定である.
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