「別室登校」による有効な支援システムを明らかにする目的から、本年度行ったことは、実際に「別室登校」による支援を行っている学校(中学校、高等学校各1校)を対象とした事例研究的な検討である。数回にわたり学校訪問や電話などによって生徒たちに中心的に関わった教員や相談員に適宜コンサルテーションを行い、また、中心的に関わった教職員のみならず、その生徒に関わる他の教職員をも含めた教職員集団に対するコンサルテーションも行った。コンサルテーションの過程を通して「別室登校」をしている生徒達への支援に教職員がどのような役割分担や連携をしているのか、その教職員のかかわりが生徒の心理的な変化にどのように影響を与えているのかについて詳細に検討をした。また、「別室登校」をしている生徒達に関わる教職員集団に対するコンサルテーションの有用性についても検討した。 その結果、個々の生徒に対しては、学校(学級内の友人関係など)または家庭(親子関係など)において蓄積された生徒本人の心理的葛藤や不適応感、満たされない思いを受容・共感する機能と、別室登校をしながらもある程度は学校の時間的な枠組みや日課(朝のあいさつ、終礼を担任と一緒に行うなど)を導入する機能(学級(の生活)から完全に孤立させるのではない)の両方が必要であり、その両者はそれぞれ異なる教職員が担当することが効果的であることが示唆された。また、教職員集団に対するコンサルテーションによって、生徒の心理的状態やニーズにあった教職員の役割分担や連携のあり方を検討することができるだけでなく、教職員同士が相互に心理的・情報的にサポートする効果もあらわれ、そのことが生徒への安定した関わりや生徒の肯定的な心理的変化につながることが明らかになった。
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