高機能自閉症等がある大学生の社会的情報読みとり能力を測定することを目的として、他者の感情や意図を声の調子(プロソディ)から判断する能力を測定するための課題を作成した。この課題は、言語内容と声の調子が一致しない音声刺激(不一致条件、例えば怒った声で「いい子だね」と言う)、一致する音声刺激(一致条件)、言語内容に特定の感情要素を含まない刺激(感情分散条件と無感情条件)を呈示し、発話者の感情を言語内容に影響されないで回答できるかどうかを調べるものであった。この課題と自閉的傾向を測定する質問紙を実施したところ、自閉症スペクトラム指数と不一致条件、無感情条件の得点間に相関が見られ、自閉的傾向を示す大学生は、感情と言語内容が一致しないような発話の意図を正しく理解することが困難である傾向が示された。自閉症スペクトラム指数の中でも、不一致課題では「社会的スキル」、「想像性」との相関が見られ、字義通りの言葉の意味とは異なるような発話を理解するためには想像力が必要であり、それがうまくいかないと、社会的スキルの問題として現れるという可能性が示唆された。 社会的認知能力に困難がある学生の精神的健康度を測定するために、大学生の精神的健康度を簡易に評価できる尺度の開発を試みた。学生相談領域で広く用いられているUPIを、4段階評定で回答するような形式に改良したUPI-RSをもとに、BDI-II、CES-Dとの相関が高い、10項目からなる尺度を開発した。その結果、内的整合性、再検査信頼性、構成概念妥当性が十分であることが示された。この尺度を「抑うつ状態尺度」と命名した。
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