高機能自閉症等がある大学生の社会的情報読みとり能力を測定することを目的として、他者の感情や意図を声の調子(プロソディ)から判断する能力を測定するための課題を作成した。この課題は、言語内容と声の調子が一致しない音声刺激(不一致条件、例えば怒った声で「いい子だね」と言う)、一致する音声刺激(一致条件)、言語内容に特定の感情要素を含まない刺激(さまざまな感情を伴って使われうる言語材料による感情分散条件と、セリフ自体に感情的要素が含まれない無感情条件)を呈示し、発話者の感情を言語内容に影響されないで回答できるかどうかを調べるものであった。男性2名、女性2名の劇団員に、準備した言語材料と指定した感情のリストを呈示し、研究代表者と2名の研究協力者(大学院生)の演技指導のものとで演じてもらい、映像制作の専門家の協力を得て撮影を行った。撮影されたセリフのビデオクリップを研究代表者と数名の大学院生で検討して、より適切な演技が行われているビデオクリップを、各セリフに付き1つまたは2つ選び、試行版感情認知課題を作成した。この課題は映像のない音声課題と、映像付きの課題の2種類からなり、さらにそれぞれ、セリフと感情の組み合わせを代えた2つのバージョンが準備された。この刺激のうち、音声課題について、EQS、共感経験尺度、自閉症スペクトラム指数質問紙とともに実施した。現在、項目分析を行い、尺度の完成をめざすとともに、質問紙との相関から、妥当性を検討するための分析を進めている。
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