研究概要 |
過敏性腸症候群をはじめとする消化器心身症状は目常生活のQOLを著しく低下させる。思春期・青年期例の場合,欠席,学業不振といった教育臨床的問題につながる可能性もある。本研究は,若年者の消化器心身症状の実態を明らかにし,ストレス低減・症状緩和を目的とした臨床心理援助を行い,その効果を生理,心理,行動面から多角的に検証しようとするものである。 今年度はまずパイロットスタディとして,一般の思春期・青年期例(高校生)に対する集団認知行動療法の効果を検証した。一般高校生39名に対し,授業時間を利用した集団自己主張訓練を実施し,実施前後の主張パターンの変化を確認した。この結果,assertive(適応的な主張パターン)は介入後増加し,aggressive, non-assertiveといった不適応的な主張パターンは減少していることが認められ,高校生に対する集団認知行動療法は一定の効果が見込めることが示唆された。この結果は日本教育心理学会第46回総会にて発表した。 上記スタディと併行し,思春期・青年期例(高校生)における消化器心身症状の調査,臨床心理援助,効果検証の準備を進めた。先行研究を詳細に検討した結果,過敏性腸症候群や反復性腹痛には心理社会的ストレスが関与しており,うつ・不安等の症状併発が高頻度に確認されること,その症状緩和には自律訓練,認知療法,ストレスマネジメント等が有効であることが確認された。これらの知見に基づき,本研究ではstress copingに焦点を当てた集団認知行動療法を行うこととした。また,東北大学の協力を得て,消化器心身症状を定量化するための各種質問紙を準備した。生理指標については,より効果的な検証を行うために,当初計画のchromogranin-Aに加えcortisolも計測することとした。今後,順次援助介入を進め,結果の分析,論文執筆を進めていく予定である。
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