研究概要 |
平成17年度は,日本国内における大学の学生相談機関の相談員に面接調査を実施し,学生の来談を促進するための工夫について実践例を収集することを目的として研究を行った。 調査の対象となったのは,北海道から九州までの12大学(国立3,私立9)の学生相談機関の相談担当者,相談関連業務担当者である。 まず,面接のための準備として,各大学の概要,学生相談室の位置づけについて,大学案内,インターネット等を活用して調べた。次に,研究への協力が得られた相談員に面接調査を実施した。その結果,以下のことが明らかになった。 第一に,多くの大学で相談担当者の個人的な信念・臨床スタイルが学生相談機関の活動の大きな方向性の決定に深く関わっており,それぞれ独自の活動が展開されていた。 第二に,いくつかの大学で,学生相談機関をめぐる危機的な状況に直面した後,相談活動の方針に大きな変化が見られた。"危機"への対処により,累積された"課題"の解消と活動の新たな展開が見られるように思われた。 第三に,学生相談を巡るハード面(予算等含む)はほとんどの大学で不足している状況であるが,相談活動の実質的な部分は,そうしたハンディにかかわらず,それぞれの大学の条件にあわせて展開されているような印象を受けた。 日常の活動の中にある実践知を掘り起こし,集約するためには,学生相談機関を事例的,了解的に理解していく必要があると考えられた。その方法を洗練し,開発していくことが今後の課題と考えられる。
|