研究課題
今年度は面接調査を通して、あきらめに至るまでの心境の移り変わりを捉えるとともに、昨年度の調査で示されたあきらめの様相について再検討することを目的とした。またあきらめの様相によって希望に差異がみられるか否かを検討した。対象者は地域社会に居住する63〜82歳の高齢者30名である。これまでの人生において思い切らなければならなかったこと、その折の心境、現在の心境などについて半構造化面接を行った。面接の内容を分析した結果、1.自分の状況を安定させようとあがく、2.どうにもならない状況であることを認めて思いを断ち切る、3.動きをとらない消極的状況に入る、4.自分の置かれた状況を引き受けていく作業を行う、というような過程を通じあきらめに至っていくことが概して認められた。また2004年度の調査でもみられたように、出来事や置かれた状況を自分のこととして引き受ける「あきらめ」や、つらい出来事の意味づけが変わる「価値の転換」に至る場合だけでなく、悩みや悔やみの最中にある「煩悶」の状態に留まる場合もあることが示された。次に、出来事を体験した後「価値の転換」「あきらめ」に至った群、今も「煩悶」を示している群に分類した上で、対象者の希望の差異について検討した。「価値の転換」や「あきらめ」を示した群は未来を明るく捉え、前向きな構えをもち、他者とのつながり感を保持していることが認められた。一方「煩悶」を示している群では、未来を暗く捉えており、前向きな態度や他者とのつながりに関する発言はそれほどみられなかった。以上のことからも、出来事や状況を自分のこととして引き受けることができた対象者やつらい出来事の意味づけを変えることができた対象者は、新たに希望を持ち得ていることが推測された。
すべて 2005
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The Gerontologist : The Gerontological Society of America : Program Abstracts of 58th Annual Scientific Meeting. 45, special issues 2
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