今年度はあきらめを測定する尺度を作成し、「あきらめ」の様相に応じて希望や精神的健康にどのような差がみられるかを検討した。対象者は地域社会に在住する中高年者427名(男性86名・女性337名、平均年齢64.37歳、年齢幅50〜90歳)である。平成16年度・17年度における調査でみられた記述などを採用し、思い切らねばならなかったことに対して今どのような心境にあるかを尋ねるための、あきらめを測定する尺度を作成した。また、Herth Hope Scale日本語版(HHS-J)、一般精神健康調査票(GHQ・12)を同時に実施した。因子分析の結果、その出来事に対して悔やまれるなどの否定的な感情に関する項目からなる因子、これでよかったと思えるといった肯定的な感情に関する項目からなる因子、今も考えないようにしているといった思考抑制に関する因子、思い通りにならないことと考えるようにしているといった合理化に関する因子の4因子が認められた。この因子得点を元にクラスター分析を行ったところ、1)ポジティブ感情が高く他の因子得点が軒並み低いパターン、2)ネガティブ感情が多少みられ思考抑制も行っているが、合理化的思考も認められるパターン、3)ネガティブ感情が強く合理化的思考もほとんどなく、思考抑制がある程度みられるパターンという3つのクラスターが出現した。現在ポジティブ感情因子が高く他の因子が低い対象者は、各因子得点がある程度認められる対象者や、否定的な感情を抱き思考抑制を行う対象者と比べ、希望や精神的健康が高かった。また、事象を体験した頃からの経過年数と、各因子得点との相関を捉えたところ、経過年数が大きくなるほど否定的感情および抑制的思考が低下し、肯定的感情および希望得点が上昇していることが認められた。
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