今年度は、死別後の不適応を予測する有効な因子を探索することを目的に、看護師によるリスク評価を実施し、昨年度調査した遺族の精神健康状態との関連性を検討した。昨年度の遺族調査で有効回答が得られた遺族のうち、配偶者を亡くした87名に関して、患者のプライマリーナースであった看護師に回答を求めた。調査の結果、18名の看護師から、78名の配偶者喪失者についての回答が得られ、回収率は88.6%であった。回答した18名の看護師の看護師経験は6〜15年で、平均8.9年であった。本人及び看護師からの回答が得られた配偶者喪失者78名の性別は男性24名、女性54名であり、年齢は37〜85歳で平均64.3歳であった。死別からの経過期間は7-21カ月で、平均13.8カ月であった。調査内容は、遺族のリスク評価尺度26項目と、主観的なリスク総合的評価(11件法、0〜10点)である。調査の結果、GHQ-28もしくはCES-Dと有意な相関関係を示すリスク評価項目は認められなかった。また、総合的なリスク評価と、GHQ-28及びCES-Dとの相関関係も見られなかった。今回の結果は、家族と看護師との認識の不一致の可能性を示すものであり、本研究でリスク関連事象と想定した家族(遺族)の心理社会的状態を第三者が評価することの難しさを示唆するものであると考えられる。また、本研究では看護師の総合的なリスク評価と遺族の精神健康の状態との関係も示されず、看護師による総合評価が最も予測力が高いとしたParkesらの研究報告を支持することはできなかった。ただし今回の調査では、調査時から7〜21か月前時点の家族の状態を尋ねており、看護師の記憶の低下による回答の歪みが推察されるため、結果の解釈にあたってはこの点に留意する必要がある。
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