今年度は、死別後の不適応遺族のリスク評価法の妥当性を検討するため、一昨年から昨年にかけて作成したリスク評価尺度25項目を用いて、死別後初期段階における看護師評価と、遺族の自己評価の比較検討、および遺族のうつ状態との関連性の検討を行った。対象は、ホスピスで亡くなった患者の遺族、および担当の病棟看護師である。看護師に対しては、看取り後7日目に質問紙調査を実施した。一方、遺族については、患者の死後、2〜3ヵ月の時点で、郵送による自記式質問紙調査を行った。調査対象となった31名の遺族のうち、21名から回答が得られ、20名の有効回答を分析対象とした。遺族の性別は男性7名、女性13名であり、年齢は34〜74歳で平均56.9歳(SD=11.2)であった。故人との続柄は、故人から見て、配偶者が10名、子が5名、兄弟姉妹が3名、姪と友人が各1名であった。ホスピス剤院日数は10〜43日で、平均21.7日(SD=9.9)であった。故人享年は44〜91歳で、平均65.9歳(SD=12.3)であった。結果として、遺族自己評価と看護師評価を比較検討すると、設定した25項目のうち10項目で、不一致率が30%を上回っていた。特に「感情状態」「性格傾向・信念」のカテゴリーで不一致数が多かった。各症例における不一致数と、患者の在院日数の関連を検討すると、負の相関関係が示され、在院日数が長い症例ほど、不一致数が少なくなる傾向が明らかとなった。そして、看護師によるリスク評価と、遺族のうつ状態の程度との有意な関連性は示されなかった。今回の結果は、不適応遺族を死別後に第三者が評価することの困難さを示唆するものである。特に、在院日数が短い患者の家族の場合には、正確なリスク評価が難しいと考えられる。また入院中における家族へのケアとして、臨床に向けては、看護師による家族の感情面への積極的な介入による理解と、他職種によるチームアプローチによる多面的な家族ケアの重要性が示唆される。
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