研究概要 |
本研究は,実験的-フィールド研究に基づいて,日常生活場面の健康関連行動と実験室場面でのストレス課題に対する心理生物学的ストレス反応性との関連性を明らかにすることを目的とした.本年度は,実験室でのストレス課題として,ストループ干渉課題,運動負荷及び温泉入浴を用いた際の心理生物学的ストレス反応性を検討した.また,フィールド場面で健康関連行動の調査を検討した.その結果,以下のような知見を得ることができた. 1.唾液free-MHPG含量,唾液s-IgA抗体産生量及び唾液コルチゾールの反応性 free-MHPGをガスマス法,s-IgAをEIAキット,コルチゾールをELISAキットにて測定した.ストループ干渉課題では,free-MHPG, s-IgA及びコルチゾールともに,上昇し,回復期で基準値に戻った.運動負荷では,free-MHPGとコルチゾールは有意に上昇したが,s-IgAは変化が認められなかった.温泉入浴では,コルチゾールは有意に上昇したが,free-MHPGとs-IgAは変化が認められなかった.s-IgAの変化は個人差が大きかった. 2.主観的ストレスの反応性 主観的ストレス反応性を,ストレス状態質問紙とPOMSを用いて測定した.ストループ干渉課題は,ネガティブな気分が惹起し,ポジティブな気分が低下した.自己注目,コントロール感,課題関連妨害思考,課題無関連妨害思考が減少した.運動負荷と温泉入浴では,ポジティブな気分が上昇し,ネガティブな気分が下降した. 3.ストレス反応性と課題遂行成績との関連性 作業成績と心理生物学的ストレス反応性との関連性を検討したところ,課題中にs-IgAが低値を示す個人に比較して高値を示す個人ほど作業成績が高かった. 4.健康関連行動の調査 健康関連行動調査票を同一被験者に一年間に4回実施し,健康行動,健康信念,健康知識及び健康に関するコントロールの所在の変化について検討した.望ましい健康行動と望ましくない健康行動の差異を明らかにした.全体的に健康関連行動に大きな変化は認められず,個人の持っている健康観はほぼ固定化されていた.
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