研究概要 |
本研究は,実験的-フィールド研究に基づいて,日常生活場面の健康関連行動と実験室場面でのストレス課題に対する心理生物学的ストレス反応性との関連性を明らかにすることを目的とした.本年度は,対象者に健康関連行動調査を実施し,望ましい健康行動を実施している個人と実施していない個人を選抜し,実験室でのメンタルストレス負荷による心理生物学的ストレス反応性と作業成績の差異について検討した.同時に,保育所に通所している子どもを対象者として,唾液の採取を行い安定性と妥当性も同時に比較検討した.その結果,以下に示す知見を得ることができた. 1.望ましい健康行動を実施している個人と実施していない個人の比較 望ましい健康行動を実施している個人は,実施していない個人に比較してfree-MHPGとコルチゾールの反応性が低く,s-IgAの反応性が高く,緊張覚醒やT-A, D, F及びCなどのネガティブな気分と課題無関連妨害思考が低かった.健康関連行動の各下位尺度を従属変数としストレス反応性を独立変数として重回帰分析を行ったところ,栄養と食事習慣とA-H,努力,嗜好品とコントロール感,ポジティブ健康行動と自尊心及び課題無関連妨害思考,運転行動と努力及びF,予防行動とコントロール感及びエネルギー覚醒との関連性が認められた.作業成績については,望ましい健康行動を実施している個人の正解率が優れていた.日常生活で望ましい健康行動を実行している個人は,実験室でのメンタルストレステストによって誘発される心理生物学的ストレス反応性が課題に対して積極的に取り組み,ネガティブな気分を抑制していることを示唆している. 2.子どもの唾液サンプル s-IgAのみ分析対象としたところ,平均40.6±8.3であり,年齢及び性差でも有意な差は認められず安定性と妥当性を検証することができた.今後子どもを対象としての基礎研究として位置づけられた.
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