研究概要 |
本研究は,実験的-フィールド研究のモデルに基づいて,日常生活場面の健康関連行動と実験室場面でのストレス課題に対する心理生物学的ストレス反応性との関連性を明らかにすることを目的とした. 本年度は,対象者に健康関連行動調査を実施し,望ましい健康行動を実施している個人と実施していない個人を選抜し,実験室でのメンタルストレス負荷による心理生物学的ストレス反応性と作業成績の差異について検討した.また,BDIによる抑うつ傾向の強い個人の特徴についても検証した. 1.望ましい健康行動を実施している個人と実施していない個人の比較 望ましい健康行動を実施している個人は,実施していない個人に比較してfree-MHPGとコルチゾールの反応性が低く,s-IgAの反応性が高かった.この知見は昨年度の研究と同様であり,生物学的反応の方向性を明らかにした.すなわち,日常生活場面の健康行動が実験的に惹起される反応に影響することを示唆している.主観的ストレス反応についてもストレス負荷がかからない方向性を示した.作業成績については,望ましい健康行動を実施している個人の正解率が優れていた.日常生活で望ましい健康行動を実行している個人は,メンタルストレステストによって誘発される心理生物学的ストレス反応性が課題に対して積極的に取り組み,ネガティブな気分を抑制していることを示唆している. 2.抑うつ傾向の強い個人の特徴 BDIによって抑うつ者と健常者を抽出し,メンタルストレステスト負荷時の心理生理学的ストレス反応の差異について検討した.抑うつ群は,健常群に比較して,主観的ストレス反応を強く自覚しており,s-IgA分泌量が低値であり,課題の作業成績も悪かった.抑うつ者は,健常者に比べ,課題による認知的混乱が強くなり,それに伴い主観的なストレスを強く認識し,免疫活性も低いことが示唆される.
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