研究概要 |
ノイズレベル・コントラスト・平均輝度の違いにより,誘導運動の特性がどのように変化するかについて検討した.視覚実験装置ViSaGeを用いて実験を行った.予備実験により,ノイズレベルを上げる,もしくは,コントラストを下げると,運動対比から運動同化に誘導運動の様式が変化する傾向があることが分かったが,実験上の問題点も見つかった.1つは,実験データが安定しないことである.実験が進むにつれて,運動同化もしくは対比傾向が変化していく被験者もいることがわかった.もう1つは,運動対比と同化が両方生じうる実験条件の設定が難しいことである.また,視野のどこに呈示するのか,注視点は呈示すべきかなど,細かい問題も予備実験を繰り返して決める必要があった.最適な実験条件を見出すため,予備実験に多くの時間をかける必要があり,本年度の大部分は,実験条件設定の予備実験を主に遂行することに費やされた. それと平行し,自然動画像の統計的情報の最適処理という点からノイズや明るさによって運動視特性がどのように変化するのかについて検討した.ノイズの推定のため,自然動画像の構造の分析を行い,オプティカルフロー拘束を用いた輝度及び運動信号の信号ノイズ比の新たな推定方法を提案した.また,推定された信号ノイズ比により,エラーを最小化するフィルターや情報量を最大にするフィルターの設計を行い,ヒトの視覚特性や,大脳皮質の視覚領域のニューロンの受容野特性との比較を行った.
|