乳幼児は対面する大人の行動をしばしば模倣し、同時に大人は乳幼児の行動を模倣する。模倣し/されるという行動の連鎖は、特に言語獲得以前の乳幼児とのコミュニケーションを成立させる手段のひとつでもある。しかし、乳幼児の模倣学習過程と比較して、大人がおこなう行動模倣を乳幼児が認知する過程やその発達については研究がおこなわれてこなかった。そこでまず「自宅で、乳幼児のすることを対面で3分間模倣し、その反応を報告」するよう210名の保護者に依頼し、結果を「行動の多様化」(1.5yrs頃までに出現)「喜ぶ」(次第に減少)「いやがる」(次第に増加)「照れる」(3.5yrs〜)「意図をたずねる」(3yrs〜)等の項目に分類し月齢群ごとに比較したところ、()内のような傾向が得られた。更に、実際に実験者が対面で対象児の行動を模倣し、模倣のない対面場面の反応と比較する実験をおこない、家庭での調査との整合性を検討中である。採用している具体的な手法は、実験室内で、2分間のベースラインセッションに続いて3分間、実験者が対象児の行動を可能な限り模倣し、また2分間のベースラインに戻るというものであった。出現した反応をビデオで記録後、反応タイプの分類をおこなっている。現在のところ質問紙と整合的な結果が得られているが、視線や細かい情動反応等の、質問紙からでは知りえない詳細なデータが蓄積されつつある。逆模倣認知における視線の影響についても分析を開始している。
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