イヌを中心とした人の福祉に役立つ動物の育成と普及、啓発、教育に関する研究を行った。 身体障害者補助犬法の周知と補助犬の受け入れについて、一般人、業界、補助犬使用者を対象に質問紙調査を行った。一般人は、法や補助犬に関する知識がある程、受け入れに肯定的な態度を示しており、法律の周知が受け入れを促進する可能性が示唆された。業界では、一般人より法の周知がなされていたが、受け入れへの取り組みは業界によって異なり、受け入れ促進には、各業界の特殊性や管轄行政機関の取り組みを考慮する必要性が指摘できた。使用者への受け入れ拒否には、悪質なケースも報告された。補助犬使用者は、非使用者よりストレスが高い面も見られ、受け入れ拒否がなされる現状では、補助犬使用がストレッサになる可能性が考えられた。イヌに対する不快感を調査した結果、中年一般人の不快感が高く、受け入れ促進には年齢の影響を考慮する必要が認められた。補助犬使用者はイヌとの特殊な関係があっても、他者と比較してイヌの負の面に不感応ではなかった。 盲導犬の育成プログラムで蓄積された記録を分析した。訓練士と飼育者による各イヌの行動特性評価得点とイヌの血統との関連では、ラブラドール・レトリーバーはゴールデン・レトリーバーより怯えにくいことが分かった。母イヌは父イヌより「攻撃性のなさ」、「吠えないこと」、「作業意欲」、「健康」の得点傾向を子に伝えやすく、父イヌは母イヌより「興奮性なさ」の得点が低かったが、父イヌは母イヌよりその性質を子に伝えやすかった。 老人福祉施設において動物介在活動を行った。イヌの在、不在で対象者の身体機能の成績に差は見られなかったが、1年間で対象者の身体機能は徐々に回復した。アニマルセラピーに関する教育の充実を目的とした学生対象の意識調査では、学生はアニマルセラピーが現代社会の様々な心理・社会的問題解決に役立つ可能性を認識していた。
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