研究課題
今年度は、次年度以後の基礎資料となるだけでなく、高血圧ラットSHRの行動的な特質の解明に直接に役立つ資料を得るため、SHRの行動が照明条件によって、どのように変化するかを調べる実験を行った。ラットに対する光の照射は、嫌悪刺激として作用することが多く、オープン・フィールドのような広場型の活動測定場面においては、活動量が減少することが多いとされる。これに対して、SHRの行動を調べた先行研究によれば、強い照明の条件下であっても、その活動量に顕著な減少を認めなかったという。この指摘は、SHRの情動的な性質を理解する上で重要であり、その情動興奮性が低いことを示しているのかもしれない。しかしながら、嫌悪刺激を提示した場合の動物の反応として、凍結反応の出現により活動が抑制されると推定できる一方、興奮性が非常に高まった場合には、逃避的な行動が多く現われて、活動量が増加する可能性も否定できない。そこで本研究では、一般に照明によって行動量が減少する2種類の実験場面、すなわちオープン・フィールドおよび高架式十字迷路と合わせて、照明により行動強度が増加する場面、つまり光照射による驚愕反応の増強事態(light-enhanced startle)でのSHRの行動を調べた。統制群は健常血圧のWKYであった。このデータ収集は3月までにほぼ完了し、現在はデータ処理を行っている。今年度は、諸般の事情により科研費の交付が遅れ、実験の開始も遅れた。この遅れを取り返すべく努力している。これまでにデータ処理の完了した範囲で記せば、光照射による驚愕反応の増強はあまり顕著ではなく、SHRは、光刺激提示に対する情動興奮性は比較的低いと推定している。また、上記の実験と合わせて、血圧降下薬ヒドララジン投与による血圧低下が、高架式十字迷路での行動に及ぼす影響を調べている。これは現在実験を継続中であり、間もなく完了する予定である。
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ICP 2004 Abstract book on CD-ROM [28th International Congress of Psychology, 13 August, 2004, Beijing, China]
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東北心理学研究 54(印刷中)
日本心理学会第68回大会発表論文集
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佐藤 俊彦
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