日常生活において、我々の暮しは様々な情報に満たされており、我々の行動はそれらの情報に左右されることが多い。情報が我々の行動に影響を与えるメカニズムを明らかにするために、食物選択・認知を例にとり、情報の提示がヒトのモノに対する認知にどのような影響を与えるかということを行動科学的に明らかにすることを本研究は目指した。今年度は最終年度であったため、これまでの研究の総括を総説論文として、また同じ内容を国際学会(ヨーロッパ化学感覚学会:ECRO)のシンポジウムで発表した。さらに、前年までに行っていた2研究を原著論文として学会誌に投稿した。 においと色の調和の効果を調べた研究では、赤/黄/緑の3色とバラ/レモン/森林の3種のにおいの組み合わせを提示し、においに対する強度評定と快不快評定を実験協力者に依頼した。その結果、黄-レモンおよび緑-森林の組み合わせのときは、他の場合に比べて、有意に快と評定されること、主観的な調和度評定値とにおいの快評定値とは有意な相関をみせることなどが明らかとなった。 食物の見た目とおいしさに関する研究では、実験参加者に摂取している食物の画像を見ている場合と見ていない場合、また見ている場合でも摂取している食物と別の食物の画像を見ている場合の三条件で、対象食物のおいしさや味嗅覚知覚を測定した。その結果、見ている食物と同じものが提示された場合には、味嗅覚知覚の促進とおいしさ評定の増加が見られ、見ている食物と異なる食物が提示された場合には、味嗅覚知覚の抑制とおいしさ評定の減少がみられることが明らかとなった。
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