研究概要 |
日本語における英語からの借用語に焦点をあて,外来語が外国語学習に及ぼす影響について,正書・意味・音韻の3つの側面から心理実験とモデル構築を組み合わせて明らかにするという本研究の目的に沿って,平成17年度は,(1)正書と意味に着目した心理実験の結果に基づく認知処理過程の仮説モデルの作成,(2)音韻に着目した検証を行うための発話データ・発話評価データ,ならびに実験刺激候補の音声データの整備,に重点を置いて研究を実施した. 大学生29名を対象とした心理実験の結果からは,外来語ともとの英単語の正書情報や音韻情報の類似性が高いほど翻訳成績が高い傾向が見られた.また,平成16年度の実験結果の詳細な分析から,英単語の認知処理に対して,単語単位では英語の正書・音韻情報がより支配的に影響を及ぼす一方で,音素単位では日本語をローマ字表記する際の正書・音韻情報が大きく影響することが明らかになった.これらの知見から,中間言語の心的辞書は,単語レベルでは外国語の影響を,音素レベルでは母語の影響を強く受けるという仮説を立てた. データの整備に関しては,外来語・カタカナ語の選定と属性の分類を行い,約1,100語からなる実験単語リストとそれらの音声を整備し,音声を使用した実験の準備を整えた.また,日本語話者児童30名の発話による英単語音声に対する英語ネイティブ話者らの評価データを得て,心的辞書内の音韻情報がより直接的に活性化される課題を通した検証を行う準備を整えた.
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