1.日本植民地下台湾における先住民教育の「普及」過程を明らかにするため、台湾総督府が先住民児童対象の初等教育機関として創設した蕃童教育所の展開過程に焦点をあて、これに関わる史料の調査・収集を行うとともに、並行してその整理・内容分析を進めた。 2.昨年度に引き続き、戦前の台湾島内発行の雑誌・新聞所載の先住民族関連記事を調査・収集し、目録を作成した。主な調査誌は、『台湾警察協会雑誌』『台湾警察時報』『台湾時報』『蕃地教育』『東台湾叢書』『台湾医学会雑誌』『台北州時報』『社会事業の友』『台湾協会会報』『台湾日日新報』等。主な所蔵機関は、国立国会図書館、台湾・国立中央図書館台湾分館、国立台湾大学附属図書館等。あわせて、内地発行の雑誌・新聞所載の先住民族関連記事の調査も進めた。主な調査誌は、『東京日日新聞』『東京朝日新聞』『読売新聞』『東京人類学会雑誌』等。 3.台湾総督府および各州庁の例規集や台湾警察法規集の調査・検討を進め、先住民族児童に対する就学「督励」に関わる諸規定の把握に努めた。主な調査機関は、国立国会図書館議会官庁資料室、台湾・国立中央図書館台湾分館、国立台湾大学附属図書館等。 4.以上の調査にもとづき検討を進めた結果、蕃童教育所の就学に関する諸規定は第二次教育標準(1928年)以降に整備されること、就学者増大に伴い総督府が「教育振興ノ基礎」を先住民族の「自発性」に俟つという論理を前面に押し出すようになること等を明らかにした。 5.これらの研究成果の一部を比較教育社会史研究会秋季大会(於同志社大学、2005年10月22日)にて口頭発表した。また、論文にまとめて、共著『帝国と学校』(叢書・比較教育社会史、昭和堂、2006年刊行予定)として公刊する予定である。
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