本年度(平成17年度)は、「幼児の人とのかかわりおける身体的行為」にかかわる同型的行為のなかでも、「他者と同じ発話をすること」および「他者と同じ物を持つこと」に関するビデオ映像の分析を行い、論文として執筆した。論文は、日本発達心理学会の『発達心理学研究』、日本質的心理学会の『質的心理学研究』に投稿した。これらの論文のなかでは、発話や物の所有における同型性が子どもどうしのかかわりにおいて持つ意味を具体的な事例を分析するという質的な手法で検討した。 また、発達研究における事例研究のあり方に関して、ミネルヴァ書房の季刊『発達』105号にこれまでの研究成果を盛り込む形で「保育実践のなかで子どもをとらえるということ-質的研究と保育実践とのつながり-」という文章にまとめ寄稿した。このなかでは、具体例を挙げて保育実践における子どもの具体的な行動の意味を理解する上で質的研究が有効であることと、保育実践を質的な手法で研究する場合の留意点、さらには質的研究と量的研究の補い合いについて論じた。 さらに、すでに観察されたビデオの分析を進めるとともに、幼稚園の3歳児クラスで継続的に観察を行い、幼児の「表現」に関する行動に注目するとともに、幼児どうしのさまざまなかかわりについて事例を収集し、幼児期の人や物とのかかわりに関して理解を深めた。同時に観察記録を毎回保育者にフィードバックし、保育者の意図や保育の文脈も含めて子どもの姿を理解するように務めた。
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