これまでの研究代表者の研究成果からは、保護者が公開して欲しいと考えている学校情報が明らかになっているが、本年度は、こうした情報と、実際に公開されている学校情報との比較検討を行い、その調和・不調和の実態を明らかにするとともに、学校情報の内容・表現の差異がもたらす、学校改革力に関する調査に着手した。 前者については、全国でもっとも先進的と考えられる横浜市が示している学校の情報公開指針を参考に、その指針が示している情報内容と、貞広(2003)によってもたらされた保護者の情報需要との比較対象を行った。その結果、保護者の需要が最も高い「学力」や「個々の教師に関する情報」は横浜市では公開すべき情報となっていない一方、最も特徴的な点として、各学校の経営やマネジメントに関する情報、特に、学校裁量予算に関する情報の公開が義務付けられていることが明らかになった。こうした学校マネジメントに関する情報は、保護者のニーズが低い一方で、学校関係者には「見る人がみればわかる」学校間の差異を明確にする情報であり、学校にはこれまでにない緊張感を生み、学校改革のエンジンとなる可能性がある。いわば、保護者の情報ニーズが低い故に風評による情報の歪みを生みにくく、それにも関わらず学校改革には効果がある情報公開の姿ともいえる。これまでの研究では、情報の供給と需要が合致することの重要性に着目してきたが、情報に対しての保護者の非中立的対応-例えば、特定の情報内容や表現方法に対する過剰反応や極端な無関心、例えば、学校間の些少な差異を非常に大きな差異と理解・反応したり、公開される情報の限られた一部しか注目・活用しないといった現状を考えると、過剰な反応を生みにくい情報領域に注目していくことは、今後の学校情報の公開に対してひとつの方向性を示していると考える。
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