本研究において今年度は、大学における計画立案ならびに目標評価に必要とされる情報収集と分析を行っているIR(Instutional Research)室の活動状況を調査した。主としてアメリカ、オセアニアの大学におかれているIRの現地調査と資料等の分析を行った。特に大学の活動状況を示す成果指標として、教育研究活動に関わるインプット、プロセス、アウトプット、アウトカムそれぞれの指標を検討し、日本の大学での管理運営、特に目標評価システムの構築に有効な指標の検討・開発を行った。 本年度の研究においては以下の事が明らかになった。1)アメリカならびにオセアニアの大学では学生の入学定員の量的・質的管理すなわちエンロール・マネジメントに関する指標が中心であること。2)教育のインプット指標、プロセス指標、アウトプット指標、アウトカム指標間の関連は単一的ではなく、複雑な相関を示していること。3)大学の計画と指標とを関連づけて目標管理のシステムが構築されていること。 そこで、まず日本の大学では目標管理システムの構築が進められているために、大学の計画と成果指標とを関連づけることから成果指標の導入を図ることが効率的であると考え、名古屋大学における中期目標・中期計画に対応した成果指標の開発を試行的に行った。 その結果、成果指標の利用における計画策定の観点からの意義を3点見いだすことができた。1)成果指標を設定することで多様な解釈を許す計画を単一の側面から捉えることが可能となる。2)成果指標を設定することで計画の統合・削除を効率的に行うことが可能となり、計画に対する組織内の合意形成を容易にする。3)成果指標を設定することで、目標と計画の水準の書き分けを可能とする。
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