ドイツ改革教育運動期の「共同体」概念の検討を進めるとともに、リヒトヴァルク校における教育実践の具体的様相について解明してきた。とくに、ペーターゼンが校長として在職した初期リヒトヴァルク校における教育実践を「共同体」概念を手がかりとしながら明らかにした。その際、平成17年8月にハンブルクおよびベルリンで収集した資料を活用した。 本年度の研究実績は、以下の二点にまとめられる。 1.ハンブルク学校改革運動の全体的把握 「学校共同体」をキーワードとしてリヒトヴァルク校の取り組みを検討した結果、教師と生徒だけでなく、保護者や地域と連携しながら、学校運営や教育活動がおこなわれていたことが明らかになった。また、近隣の学校ならびに保護者との連携も積極的にとられており、実験学校を中核としながら地域全体でハンブルク学校改革運動が推進されていたことを検証した。(研究論文:ハンブルク学校改革運動における学校共同体の様相) 2.改革教育運動における「共同体」概念の多義性の指摘 「学級共同体」をキーワードとしてリヒトヴァルク校における学級観と実態を検討してみると、ペーターゼンと他の教師たちとの見解の相違が浮かび上がった。これは、両者の思想的背景や教育上の志向性の違いに起因するだけでなく、ドイツ改革教育運動全体を見通したときにも看取される「共同体」概念の有する多義性によるものと指摘した。(研究論文:リヒトヴァルク校における学級共同体の構想)
|