本研究の目的は、東西ドイツ統一により社会・経済・価値が変化し、それにより旧東ドイツ地域の大学教員も「西ドイツ化」したという「知的ヘゲモニーの西ドイツ化」の実体とその構造を、教授市場と人事の実体を分析することによって明らかにすることにある。 旧東ドイツ大学が統一にともない解体され再編されたことや、その際旧東ドイツの大学教員の多くが解雇されたこと、そして手続き上政治審査と専門審査が行われたことは、これまでにも明らかにしてきた。これらの大枠は、連邦レベルそして州レベルで決議され、それに伴い大学が詳細な手続きを取り決め、執行したわけである。法的な枠組みや諸規定はこれまでに入手してきたが、これまで入手がむずかしかったのは、それが各大学でどのような状況で実際に行われていたのが、どのような意思決定の過程があったのかを裏付ける、大学の意思決定機関および会議の議事録等の生の資料であった。 そこで、本年度は、当時の大学発行の新聞や機関紙をたどり(特に、ライプツィヒ大学、イエナ大学、フンボルト大学)、そこに掲載されている会議の日程や内容、及び議事録、それに関する意見表明、また、再編後の大学の招聘教授陣の講演や挨拶、大学改革の方向付けなどの資料を収集し、分析を進めている。さらに大学史の編集に着手している大学(例えばイエナ大学)の史料には、個人的に所有されていた議事録や手紙なども収集されており、それらの一部にもアクセスすることができた。 また数的に旧東ドイツ地域の大学教員の「西ドイツ化」を実証し、再編後の大学の教授における西ドイツ出身者の割合や学問的系譜をたどることができるように、特に教育学部の教授に関してその履歴を探りデータベース化に着手した。
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