本研究は、「生涯学習における問題解決アプローチに関する研究」を主な課題として、平成16年度は特に問題解決アプローチに関する理論構築、教育実践の実態調査、および教育実践方法の開発をそれぞれ行った。 まず理論構築としては、デューイのプラグマティズムと教育理論を再検討して、問題解決学習のあるべき形態を抽出し、その問題解決学習のスタイルを道徳教育に取り入れて再構成した。この研究成果は、論文「デューイ道徳教育論とその展開」において発表した。その後で、ローティのネオ・プラグマティズムと教育理論を検討した上で、デューイの教育思想や方法論との比較考察を試みた。この研究成果は、論文「デューイとローティの教育思想に関する比較考察」と論文「ローティと教育的理性批判」において発表した。 次に、教育実践の実態調査としては、学校教育における「道徳の時間」と「総合的な学習の時間」に注目した。各地の小中学校を訪問して授業風景をビデオ撮影した後で、授業の担当者と教育実践について分析した。こうした検討会をふまえて従来の道徳授業の方法を批判的に考察して、問題解決能力を育成するための教育方法が必要であるという結論に至った。この研究成果は、論文「道徳教育における問題解決能力の育成」において発表した。 最後に、問題解決アプローチの教育実践方法の開発としては、問題解決型の道徳授業の実践方法を具体的に構想し、実際に現場の教師と連携して教育実践を行った。そこで得られた教育成果を検証して論文「問題解決型の道徳授業の理論と実践」において発表した。 以上のような3つの側面から問題解決アプローチに関する研究を深め、子どもの問題解決能力を高めて豊かな人間性を育むための教育理論を構築し、現場の実態に対応した問題解決型の道徳教育方法を開発することができた。
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