研究概要 |
遠隔高等教育システムのメタ・アナリシスを実施するため,過去5年間の教育工学関連学協会連合に参画している学会の学術雑誌,学会発表を中心に研究結果を収集した。なお,ここでは,遠隔教育を「教授者と学習者が物理的に対面の形態をとらない授業形式」と定義し,さらに時間の半分以上を遠隔教育で実施している研究を対象とした。現在,112本の日本国内の論文等をデータ化して分析を進めており,分析結果もいくらか得られている。しかし,これらデータの中でも研究の設計に係わる要因が多岐にわたり,比較困難な要因も存在するため,対象研究数を増加させることをねらいとして,現在,他国の研究に関しても情報収集を進めている。 分析においては,遠隔授業の教育効果を規定する要因として,遠隔授業の形態,教授者・学習者の属性などの設計要因,その設計に基づいた実際の運用に関する運用要因の2つを想定し,それらが「講義への興味」「参加度」などの遠隔授業の結果要因に影響を与え,さらに「成績」「講義の満足度」などの成果要因に影響を与えるという3段階のモデルで行われており,それがおおよそ妥当であると予測されている。今後,実際の遠隔教育を実施している事例との比較によって,当該モデルの妥当性の検証,およびその改善を予定している。 今年度は,世界各国の遠隔授業の質保証のガイドラインや,既存の事例研究等を参考にしつつ,最終的な遠隔高等教育システムの質保証に向けて,モデル構築を行う。日本のみならず,世界各国でも,高等教育の質保証に関する議論が盛んであり,特にe-learningをはじめとする遠隔教育をどのように扱うかという点は,世界的に見ても大きな問題である。将来的に役に立つ成果となるよう研究を進め,取り纏めを行う予定である。
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