本研究は、学卒無業者に対するまなざしの歴史的変化を明らかにすることを目的としている。それによって、学卒者に対する政策の妥当性を検討することを視野に入れている。学卒無業者の定義に合致する人数を推計したところ、学卒無業者が問題視される以前の70年代以前には現在と匹敵する割合で学卒無業者になっていることが明らかになった。そのため本年度は長期的に学卒無業者に関する見出しが検索できる『朝日新聞戦後見出しデータベース』を用いて該当する見出しを検索し、その記事を分析した。その結果、以下の知見を得られた。 (1)経済変動が70年代以前の高卒無業者数の推移に関連があったとは言い難い。 (2)結核治癒者や夜間学生、女子等、就職することが忌避されている者も存在していた。 (3)70年代にも若者気質の変化が記事として取り上げられていることから、近年の学卒無業者の増加理由として若者気質の変化を挙げるのは妥当ではない。 以上の知見を日本教育社会学会第56回大会に於いて報告した。現在それをもとに論文にまとめている。 また、以上の知見を踏まえて、次に学卒無業者へのまなざしの地域差について考察するため、典型的な地域においてヤングハローワーク等で若者支援を行なっている担当者に聞き取り調査を行った。これをもとに17年度も研究を継続する予定である。
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