1.学生対象のアンケート調査の実施 平成17年2月に「学校教育体験と教職志向に関するアンケート調査」と題する調査を実施した。調査は本学教育学部生及び他学部(法文学部、総合理工学部)に在籍する教職科目受講生を対象とした。回答者数に教育学部生368名、他学部生175名であり、合計543名に上る。調査では、過去の学校教育における肯定的・否定的体験、教師とのかかわり、教職をめざしている理由、父親及び母親の職業、高校時代の進路指導・進路選択、現在の大学生活にわける取り組み、教職に対する見解などを網羅的に訊ねた。この調査から「教職を志向する/しない」の背後に潜む要因を実証的に明らかにし、次年度以降に実施するインタビュー調査の枠組を抽出する。 2.先行研究の検討 本研究の理論的枠組を得るため、おもに潜在的カリキュラム論、感情社会学、アメリカにおけるProfessional Development Schoolに係る先行研究を検討した。このうち、とくに感情社会学の領域では、本年度に交付された補助金をもとに主要な文献を入手することができた。これらの先行研究の検討を通して、いわゆる「学校教育的価値観」と、それに対する「感情の制度化」という、本研究の立脚点を明確にすることができた。すなわち、従来の学校論(学校組織論)は、主として「合理性」をベースに展開する傾向が強く、したがって、「学校教育の人間化」といった教育実践でさえ、一種の官僚制的な権力論のアナロジーで批判的に検討することしかできなかった。しかし、これらの先行研究を検討したところ、「教職への予期的社会化における感情統制」の解明にあたっては、学校の「合理性」に対する批判的検討よりも、むしろその「非合理性」に焦点化し、なかば非合理的に醸成される「教職志向」の解明を進めた方が有効との知見を得た。
|